西丸尾(小池さん)の桜  
               
                           
               
               

 朝部屋のカーテンを開けた。昨夜の天気予報では雨だったが、雪が舞い落ち、うっすらと積もっている。

 小池さんの桜は8分咲き程度のようだが、桜に雪が降り注ぐ光景に出会うチャンスはめったになかろう。フロントに行き、朝食の時間を遅く出来ないかと相談。直ちに車に乗り込んだ。

 雪の中にひっそりとたたずむ小池さんの桜。ピンクの花の上に白い雪がかわいらしく乗っている。今まで数回は見た小池さんの桜とは異なる風情に、あわただしく車から降りた。

 左肩に傘をかけ、左指でカメラを支え、ISO感度を上げてシャッターを切る。降りしきる雪を止めて写そうとシャッタースピードを調整する。

 幾分パープル色で寒げな花が美しい。花のアップの写真は苦手で撮影したことはなく、このすてきな情景も花びらを大きくカメラに収めることはできなかった。

 宿に戻るころは、ほぼ雪は止み、出かけには真っ白だった宿の芝生も青い色が見えるようになっている。本当に僅かな時間だけ美しい景色が観られ、幸運だった。

 翌々日満開になった小池さんの桜鑑賞に再び訪れた。曇りだったがピンクの花と濃艶な姿の枝ぶりに見とれてしまう。様々な角度から眺めて堪能し、カメラを向ける。幾度訪れても飽きることなく楽しませてくれる桜だった。

 15年前雑誌で、蔵澤寺の古木の桜と姿の美しい桜の2つの写真を見た。家内とこの桜を愉しもうと蔵澤寺に行き、訪れていたご夫婦に姿の美しい桜を見せて、この桜はどこにあるのでしょうかと訊ねた。

 その桜を撮影に行くから、一緒に行きましょうと誘い案内してくださった。その方は駒ケ根市に住んでいる写真家 Kさんだった。

 お話をしていたら、地図をだして10数か所に印をつけ、すばらしい桜があるからいってごらんなさいと、勧められた。

 家内と訪れたそれらの桜はどれもすてきで魅惑されてしまった。その後何度も伊那谷の桜鑑賞と撮影に訪れているが、益々その魅力にはまっている。

 小池さんの桜は、伊那谷の桜のとりこになった想い出深い桜だ。

撮影日 2015.4.8&4.10
撮影地 長野県下伊那郡中川村

おりおりの熟年生活(お茶の時間)