春 雪 の 開 田 高 原

 開田高原滞在中の4月22日湿った雪が降り、白くなった木々と御岳山の美しい風景を見ることができた。

 4月19日 千葉から途中にある高遠城址公園のコヒガン桜を見物して、春の未だ浅い開田高原に向かう。天気予報では今日19日は晴れとなっているが、その後の数日は雨または曇りだ。談笑予定の時を除くと、山小屋でコーヒーをいれてCDを聴きながら読書の毎日になりそうだ。

 20日 曇りだが雨は大丈夫な様子。カメラを下げて開田村内をぶらつく。日陰には雪が残っている。雪のところどころで緑色のかわいいフキノトウが、雪の帽子をのせた頭をそっとのぞかせている。今夜の晩餐用にいくつかのふきのとうを摘みとる。蕗味噌、天ぷら、喉がなる。

 藤沢に行く。水路の中にリュウキンカを見つける。昔は田んぼの周りなどどこででも見かけられたそうだが、今はあまりみかけなくなった。

 藤沢は水芭蕉の自生地としては日本の南限だ。白いかれんな水芭蕉がたくさん咲いている。一時は栄養が豊富で大きくなっていたが、目の前のものは本来の小振りな姿になっている。かなりダイエットに励んだのだろうか。

 この時期はフクジュソウが満開の筈だ。開田高原では群生地が2ヵ所ある。なかでも数が多い越に向かう。土手一面に黄色い福寿草が咲き、あたりの風景に馴染んでいる。

 21日 朝のうちはCDを聴いていたが、雨が小降りになったので午後から出かけた。気に入った風景を何枚か写真に収める。テレビから流れる明日の天気予報は、長野県の中部と南部は明け方までは雨、その後は晴れとのこと。晴れたら付近を家内と散歩しようかな。

 22日 5時過ぎに目覚める。昨夜来の雨音が続いている。しばらくすると雨音がなくなり静かになった。ひょいと窓から外をのぞくと雪に変わっていた。この時節なら湿雪だろう。枝や幹に春雪が積もり樹木が白くなるのではなかろうか。すぐに飛び起きて、カメラを準備、いそいで外に出た。

 外気温度はー3℃、屋外駐車のマイカーには既に1cmほどの雪が積もっている。雪を払いスタート。さぁどこに行こうか。車を走らせて1〜2分、管理センターに着く頃は雪は降っていない。山小屋からたまに見える雲海が、管理センターからは見えることがないそうだ。山小屋との標高差200mは自然現象では大きな違いだと実感する。

 この雪はおそらく開田村内でも高度の高いところだけに降っているのだろう。美しい樹林がある高いところとなれば、長峰峠だ。途中白くなった樹木の写真を写しながら峠に到着。すでに雪は降り止んでいたし、少し強い風が吹いていたためか、期待したような光景は見られなかった。

 昼食後のんびりとしていたら、大粒のぼたん雪が降り出した。ベランダや熊笹の葉がみるみる白くなり、雪が積もっていく。管理センターに下りてもまだ雪は降っている。今朝よりも雪が多いのかも知れない。再び長峰峠に向かう。今度は直行だ。

 長峰峠に着くと同時に雪は降り止んだ。雲が低くたれこめてすっきりとしない風景だ。でも樹木には雪が積もっている。霧氷とは違ったボリューム感がある。雪の花に包まれて満開になっているのだ。

 車のタイヤは今月初め、夏用に交換してしまっている。駐車場所を慎重に選ばないと、発進時スリップするかも知れない。少し離れた峠頂上の茶屋前の空地に停める。あたりには誰もいない。晴天ならば見える御岳山も雲の中だ。

 カメラを準備して写真撮影。数分もしないのに雪が目に見えて溶けていく。春の淡雪ははかないものだと思い知った。通りがかった車から夫婦が降りて写真を撮っていたが、既に先ほどまでのすばらしい美しさは失っていた。

 昨夜の天気予報は大はずれだ。でもこんなはずれならおおいに歓迎する。もっともテレビをみていると周辺地域は晴れているようだ。もしパソコンで開田村のピンポイント予報を調べたら、雨か雪になっていたのだろうか。

 23日 ウグイスのさえずりで目を覚ます。今朝は放射冷却になるとの天気予報だったので天候は快晴だろ
と窓の外を見る。木曽駒ヵ岳の上の空がオレンジ色に輝いている。しばらくすると反対の窓の木曽御岳山が赤く染まっていった。開田に来てはじめての快晴だ。しばらくまどろんだ後、6時を過ぎて起きだす。

 外の寒暖計はー8℃を指しているが、この状況なら神王原への道は通行出来るだろう。昨秋訪れて以来なので久しぶりに行ってみよう。

 神王原に到着したら、谷間のからまつ林に太陽が当たりはじめたところだった。落葉松の濃い色が昨日の雪でしっとりとし、陽射しに照らされて美しい陰影をみせている。雪のからまつ林も見たかった。

 帰り道車を停めて後を振り返る。降ったばかりの雪で、真っ白にお化粧直しをした御岳山が、真っ青な空とぽっかりと浮かんだ白い雲の下で、のどかな表情をして見せていた。

 千葉への帰路、木曽路は桜が咲き始めていた。中央高速道の長野・山梨付近は桜が満開、山梨・八王子は新緑が鮮やかで美しかった。対照的にマイカーは、車体全面が無数の細かい灰色の斑点で覆うわれ、薄汚れた姿になっていた。

 降雪の前日テレビの天気予報の中で、中国大陸からの黄砂が西日本から関東地方まで到達したと報道していた。車体の見るも汚い模様は、雪が溶けた後突然現れたものだ。おそらく雪が大気中の黄砂を抱えこんで降ってきたのだろう。中国の環境破壊をまざまざと実感したのだった。

撮影日 2005年4月20〜23日
撮影地 開田高原(長野県木曽郡開田村)

おりおりの熟年生活(開田春秋)