初 秋 の 開 田 高 原

 初秋の開田高原滞在日記

 第1日

 いつもは早朝に千葉の自宅をでるが、朝残った用件を片付けて10時に自宅を出発。途中昼食を中央高速道の諏訪サービスエリアで摂り、木曽福島町のスーパーで滞在中の食料を購入。16時前に山小屋に到着した。

 気温は14℃、しかし千葉を発つときに着た半袖のポロシャツ1枚ながら心地よい。千葉ではセーターが必要な気温なのにといつもながら不思議な気分だ(真冬のー20℃の開田では、千葉の服装にダウンジャケットとフリース付きのズボンを着込むだけだから当然だとも思えたが)

 敷地の中を一巡りすると、レンゲツツジの花芽がいくつもある。来年6月は満開のレンゲツツジを楽しみに必ず来ることにしよう。

 今年あちこちで咲いていたササユリは、その種の殆どが盗られてしまっている。僅かに目立ちにくいところだけが残されている。心ない人がいるものだ。

 イクチはまだ早いのか昨年よりは少ないが、2〜3回ビールのつまみにはできそうだ。


 第2日

 ゆっくりと起きだして朝食。Kさんからお茶のお誘い。食後 村人の Oさん、Hさんなどをたずねてなにやかやと打ち合わせ。

 Hさんの奥さん 裏の畠で数種類の野菜を獲ってきて、食べてちょうだいとくれる。いついただいても開田の野菜は新鮮で味わいがある。この時季はとても甘いとうもろこし、イクチやボーズなどがありバター焼きでビールのつまみにする。夜の訪れが待ちどうしい。

 管理センター近くで 小柄なTさんに出会う。都会住まいの女性ながら有機肥料をいっぱい運んでいる。作物の出来がよいとかで、にこにこ顔だった。ときどきいただく野菜の美味いこと、次の収穫の時期はいつ頃なのだろうか。

 昼食は透過光で輝くコナラの葉と青空を眺めながらベランダで。

 14時 Kさんの山荘に。Kさんご夫婦は先日コロラド州在住アメリカ人の友人の招待で山荘を訪問されている。

 Kさんは友人とともに訪れたロッキー山脈国立公園、イエローストーン、グランドティートン、友人の山荘と周辺の風景をデジカメで撮影。帰国後ナレーションと音楽入りのDVDに編集。

 旅行の様子を大型液晶テレビにうつして迫力ある映像を観賞。気がつけば数時間を経過、早くも夕暮れになっていた。

 いつもはKさん達と食事をともにする Nさんご夫妻はカナダに今日出発されたとのこと。来月はその話で盛り上がるだろう。


 第3日

 5時起床、西野に出かけて早朝の風景を眺める。今朝は霧の発生状態はあまりよくない。平凡な風景だ。西野への途中で見えた御岳山は見事な赤焼けだった。

 早朝にもかかわらず西野のパッチワークのように整備された畑では、数家族の農家が一家総出で 御岳はくさい の獲りいれと出荷準備をしている。そばもいっぱいの実をつけ、とうもろこしの出来もよさそうだ。

 朝食後、家内としばらく行っていない地蔵峠へ向かう。最近は通る人が少ないのだろう、道に落ち葉が散開している。御岳山は雲に隠れて見えず。唐沢の滝への道を歩く。落差100メートル(道路が出来る前は130メートルあったと説明看板に掲載)世間には知られていないが水量が豊富で見ごたえがある。

 昼食はKさんが教えてくれた 木曽福島町新開芝原の 時香忘 (0264−27−6428)に出かける。

 深い緑に囲まれ、せせらぎの流れが見える上品なたたずまいの中、ご主人 高田典和さんの話を聴く。1日につくるのは2品だけ。今日は粗引きおやまぼくちそばのもりとおろしだけとのこと。

 雄山火口(おやまぼくち)という幻の山菜の葉脈(20kgの山菜から200g 僅かに1%とれるだけとか)を0.25%つなぎに使った蕎麦、開田高原のそば、裏山で採れた茸などの汁、御岳の自然水。こだわりの逸品だ。

 運ばれてきた蕎麦、美味い。絶品だ。風味、舌触り、のど越し、どのように表現すればよいのだろう。食後のそばきりの美味さにもうなる。

 帰る途中 Hさんに寄り、灯油を60リットル購入、次に来るときはストーブが必要だろうから、その準備だ。

 午後は山小屋に帰り、のんびりとCDの音楽を聴きながらベランダで読書をして過ごす。15時ごろコーヒータイム、やまゆり荘で買った出来立てのそばまんじゅうがうまい。

 夕暮れて 村人の Tさんが来る。2〜3日後から出荷がはじまるという百合 ティアラ、ソルボンヌ、その他を持参。改良がすすみ芳香はおだやかに、花粉は落ちなくなったものだそうな。

 百合は開田高原の寒暖の差が大きいので、東京大田市場でも評価の高い最優秀なものが生産できるそうな。台風の襲来も大きな影響がなく、ほどなく出荷できるとのこと。

 食事をしながらたわいない雑談。いつものことだが私が愉しみにしている傑作写真を多数持参。千葉からスライド映写機を持参しなかったのでプリント写真だけだ。

 今年撮りためた開田高原の写真をたっぷりと拝見。銀座にある富士フォトサロンで上高地の写真展を数年前に開催したが、開田高原の写真で同所で再度写真展を開催したいと鋭意撮影中とのこと。

 開田高原写真展を富士フォトサロンで開催できるよう激励したい。


 第4日

 早朝カメラ持参で西野に行く。6時 早朝の作業をひとつ終えた Tさんと出会う。今日は撮影条件は良くないなぁとの話になる。

 それならばとTさん。昨日私がすてきな写真といった場所に行こうと案内をしてくれる。鄙びた小屋、白菜、御岳山、白い雲が山間をたなびいている。Tさんの写真は蕎麦の白い花の時期だったが、今日の情景も風情がある。

 7時これから出荷作業に奮闘だというTさんと別れる。村内はどこもかもすすきがあり、きれいだ。いまが最も美しい時節だろうか。でも写真に撮ろうとするとなかなか難しい。

 朝食後は先日の台風16号、18号の猛烈な風で、レンゲツツジなどの小さな木や草花の上に落ちた小枝を拾い集める。密集している黄色いアキノキリンソウが鮮やかに目だつ。

 ベランダで昼食後、そのまま音楽をかけて読書。透過光の柔らかな光と冷気を含んだ風が高原を感じさせる。15時ごろコーヒータイム。

 16時前 木曽馬の里に行く。写真月刊誌に1年間にわたり開田高原を載せているプロ写真家の Kさんに出会う。

 1時間ほど前にすばらしいいわし雲が発生。樫の大樹と組み合わせてすてきな開田高原の秋を表現できたとのこと。

 18時過ぎの暗くなるまで雑談をしながら写真を撮影。有意義なお話をいくつもきくことができた。


 第5日

 開田にくると早朝自然に目がさめる。今朝は雲がひろがっているから、どこに行こうか。写真はだめだろうからマイアスキー場付近の様子をさぐることにしようとでかけた。

 真冬には雪をいただく木曽駒が岳も見えず、これといった風景もなし。朝のドライブだけで帰る。

 朝食を終えたころ、K先生が敷地にリンドウが咲いていたのでと届けてくれ、お茶でもどうですかと誘われる。K先生の山荘で奥さまとご一緒にしばし雑談。

 10年ほど前までは毎週テレビに出演して健康・医療の話をしておられたのだが、その話を自ら実践されていて、85歳の今もかくしゃくとしてすごしていらっしゃる。毎日散歩でわが山小屋の前を颯爽と歩いておられる姿は背筋がのびて若々しい。

 昼食をベランダで軽くとる。食後末川にでかける。黄金に輝く稲がたわわにたれさがっている。天候に恵まれたので豊作の様子。

 一家で稲刈り中の風景に出会う。稲刈りのじゃまにならないようにしながら雑談、今年の米のできはよいぞとのこと、写真を撮らせてもらう。

 その後木曽馬の里にまわり、Nさん、Mさんなどと話。林の中に放牧中の木曽馬を見る。

 山小屋に隣接のS先生、道ひとつはさんだKさん、Hさん。滞在されていれば夕食をご一緒してさまざまなお話が聞かれるのだが、未滞在だ。夏が過ぎ、紅葉には早く時期が悪いからだろうか。

 夕食をしながら家内と、今年は葉が痛んでいるので紅葉はいまいちかななどと会話。アラスカ・デナリ国立公園の草紅葉やフェアバンクス周辺の紅葉がきれいなそうなと話題になる。

 今年2月のアラスカのオーロラ観賞旅行は父の入院で中止したが、次にアラスカ行きを計画するなら9月中旬で、紅葉と氷河クルーズのシーズン終了前かつオーロラ観賞ができるときにしようと相談がまとまった。

 もしオーロラが見られなかったら、改めて冬にオーロラだけを見物に行くことにして。


 第6日

 今にも雨が降りそうな天候。朝食後管理センターまで車でおりて、保健休養地の入口近くを2時間程家内と散策。やまゆり荘で そばまんじゅうを購入。管理センターに立ち寄り、雑談にしばしのときを過ごす。

 曇天のままなので、昼食はベランダでとる。

 午後は家内とふたり敷地に侵入してきた熊笹退治、熊笹があると樹木や草花が生えない。小さな落葉松やコナラの木を根から引き抜く。数年もすると根を深く広くはって切るのに困るのだ。

 15時ごろ、作業を終了。そばまんじゅうを頬ばる。やわらかく餡の上品な甘さが口の中いっぱいにひろがる。森のなかに静かに流れる音楽を聴いて過ごす。

 父の入院で先延ばしにしていた H嬢とN嬢の開田高原訪問、Kさんご夫妻の拙宅訪問(ニュージーランド旅行の写真拝見とお土産の話)を10月にできそうかなぁと相談。大阪滞在と千葉での用件を帰葉後整理し、日にちに空きがあればメールで打ち合わせることにした。

 両親のことはあるものの、10月からは自分の日常生活の一部を復活させることができるだろう。

 でも例年紅葉や冬景色撮影にくる写真仲間などには、今年は日にちがとれないだろうな。


 第7日

 朝から雨。掃除を済ませて荷物を積む。次に来たときのためにストーブの灯油タンクが満タンであることを確認。水処理のことだが10月中旬に来るのならまぁ大丈夫だろうと考えて手抜きする。ただし念のため給水管などの電気熱線ははON。早ければ10月初旬、例年でも10月20日前後に御岳山には初冠雪があるのだが。

 Hさんで給油、30年近く使用した灯油ストーブの送油ホースと煙突の交換を頼む。今月中には処理しておくとのこと。

 双葉サービスエリアで昼食、石川サービスエリアで休憩、5時間で千葉に帰りつく。早朝や夜でなく日中でも、渋滞がないと途中で2ヵ所に立ち寄ってもこの時間で行き来できた。

 両親の世話でここ7ヵ月は殆ど大阪滞在だった。父が転院、母がケアハウスに入居できて、2週間ほどゆっくりできることになった。1週間はたまった用件の処理についやしたが、1週間は開田高原にある山小屋に出かけてひさしぶりにのんびりと過ごした。


撮影地 長野県木曽郡開田村 開田高原
撮影日 2004.9.10〜9.12

おりおりの熟年生活(開田春秋)